2016-05-31
HISHAB社(在バングラデシュ)への出資
大変ご無沙汰してしましいました、IMJIPシンガポールオフィスの廣田です。
この度、弊社は去る2月に初めて在バングラデシュのHISHAB LTD.社に投資を行った事をここにご報告致します!2月の投資実行以降、HISHABがプロダクトの開発と携帯電話会社との業務提携&売上分配契約の締結に集中していた為、ご報告が遅れてしまいました。
HISHABはバングラデシュで音声通話によるB2B2C間の取引記録・商店の在庫管理ソリューションを提供しています。具体的には、消費者Aさんが商店Bに行きお米を10キロ買った場合に、その取引内容を音声通話に吹き込み、裏側でHISHABが文字起こしをした後、消費者Aさんと商店BにSMSと自動音声で取引の内容確認書を送る仕組みです。現時点では現地の安価な労働力を活かして人力で文字起こしをしていますが、将来的にはオープンソースのNLP(Natural Language Processing:自然言語処理技術)を用いて限りなく自動化できる見込みです。また、課金は直接ユーザーに行うのでは無く、音声通話収入(1分当たり1.5円程だそうです)が増える携帯電話会社と売上分配するという仕組みで、未整備な課金インフラの影響を受けずにサービスを持続的に展開する事が可能です。
HISHABが音声通話を活用したソリューションを提供する背景には、主に三つの理由があります。
①低識字率:バングラデシュの識字率は、改善傾向は見られるものの今日でも60%程度です。その為、特にB2C間の取引において文字で内容を記録する事が困難な場合があります。
②ツケ取引の慣習:バングラデシュではトレードファイナンスやクレジットカードなどの与信供与システムが発達していない為、代わりに「ツケ取引」が頻繁に行われています。尤も、特に消費者側に読み書きができない人が多い為、実際の支払いの際に商店側とトラブルになる事が多いそうです。
③データ通信インフラ整備の遅れ:バングラデシュでもスマートフォンは急速に普及していますが、一方でデータ通信インフラの整備が追い付いておらず、データ回線を用いたサービスの提供は不安定さが否めません。また、携帯電話会社としても既存の音声通話インフラの有効活用に頭を悩ませているそうです(日本でも、LINEやFBのデータ回線を用いた無料通話の普及が携帯電話会社にとっての悩みですね)。
【ツケ取引を記録する分厚い帳簿@ダッカのとある個人商店】
【創業者のZubiさんとサービス紹介の旗(ベンガル語、英語、日本語に堪能なナイスガイです!)】
HISHABは先ずは未開拓のバングラデシュ市場を狙っていますが、1年後にはインドの地方やミャンマーへの進出を狙っています。また、個人や企業の取引データを蓄積する事により、将来的にはマイクロファイナンス事業の展開なども視野に入れています。
アジアのフロンティアから他の新興国へグローバルに展開する、そんなサービスになり得ると判断し、今回Seed投資家としてHISHABに参画できた事にとても興奮しています!皆様も是非、HISHAB社の成長を見守って頂ければ幸いです!
【ご参考情報:バングラデシュ市場概観】
バングラデシュは日本の約4割の面積に約1億6千万人が暮らす、世界でも有数の人口過密国家である。一人当たりのGDPは約1,000USドルとアジアの中でも最貧国に位置付けられるが、豊富な労働力を目当てに労働集約的な繊維産業の進出が進んでおり、海外からの投資と内需が牽引する形で2015年のGDP成長率は前年比+6%台半ばに達する見込み。
国家の成り立ちを振り返ると、1971年にベンガル人を中心にパキスタンから独立を果たした経緯もあり、国民の大半はムスリムで公用語はベンガル語と、市場としての均質性は高い。隣国の人口大国インドには及ばないものの、狭い国土に人々が集住し且つ宗教や言語で纏まりがあるという意味で、単一の市場規模としては大いなる潜在可能性を秘めていると評価できる。